「○○フリー」はなぜ届かないのか。中小企業のブランディングに効くネーミングの考え方
こんにちは、カケハシ・スタイル代表で中小企業診断士の田中です。
先日、自然素材の家づくりを手がける建築士さんのヒアリングにうかがいました。化学物質や電磁波の影響にまで配慮した、体にやさしい住まいを提唱されています。
お話を聞きながら、ひとつだけ引っかかることがありました。特徴を表す言葉が、「化学物質フリー」「電磁波フリー」だったのです。
決して間違ってはいません。でも、この言葉で、建築士さんの想いはお客さまに届くだろうか。
今日は、この「言葉の翻訳」——マイナス訴求を、共感される言葉に言い換えるネーミングの考え方についてお話しします。
「伝わらなければ、存在していないのと同じ」
私がブランディングのご支援で、いつもお伝えしている言葉があります。
どんなに良い商品や技術があっても、伝わらなければ、存在していないのと同じ。
厳しい言い方に聞こえるかもしれません。でも、これは多くの中小企業が直面している現実です。
素晴らしい素材を使っている。他社にはない技術がある。想いを込めてつくっている。——それなのに、なぜか選ばれない。理由の多くは、商品そのものではなく、「伝える言葉」にあります。
先ほどの建築士さんも、まさにそうでした。想いはあるのに、なかなかお客さまに届かない。そんな悔しい経験を重ねてこられたそうです。
では、何が問題だったのでしょうか。
「○○フリー」の落とし穴。なぜマイナス訴求は届きにくいのか
「化学物質フリー」「電磁波フリー」といったマイナス訴求。「よくないもの」を打ち消すことで価値を伝えようとする、否定形の表現です。
一見、正しく見えます。でも、マイナス訴求には落とし穴があります。
「電磁波フリー」と聞いて、多くの人はこう思います。「電磁波って、そんなに怖いものなの?」と。
家づくりは本来、ワクワクする買い物のはずです。それなのに、入口が「怖さ」の話から始まってしまう。
「共感」とは、お客さまの隣に立って、同じ方向を向いていること。私はそう考えています。
ところが「電磁波は怖い。でも、うちなら大丈夫」というマイナス訴求は、お客さまの正面に立って、不安を差し出す構図です。同じ方向を向くどころか、向かい合ってしまっている。
これでは、なかなか共感は生まれません。
否定を、憧れに。強みを「共感される言葉」に翻訳する
そこで、一緒に言葉を考えてみました。翻訳の元手になるのは、その建築士さんがもともと持っている「らしさ」です。新しく足すのではなく、すでにある想いを、別の言葉で語り直す。
たどりついたのが、こんな言葉でした。
暮らしに、自然のリズムを。
光がめぐり、風がめぐり、季節がめぐる。
足すのではなく、自然のはたらきを活かす。
一年を通して心地よく、百年先まで、家族がすこやかに過ごせる家を。
そして、この住まいに「めぐりの家」という名前をつけました。
いかがでしょうか。「電磁波フリーの家」と「めぐりの家」。中身はまったく同じ家です。でも、心に浮かぶ風景が、まるで違うのではないでしょうか。
前者は「守り」の言葉。後者は「憧れ」の言葉です。
「化学物質を使わない」という事実は、「自然の素材でつくる」と言い換えられます。「電磁波対策をしている」は、「家じゅうに、きれいな空気と光がめぐる」と語り直せます。
ポイントは、対策そのものではなく、その先にある暮らしを語ること。お客さまが本当に欲しいのは「対策」という”モノ”ではなく、「安心して過ごせる毎日」という”コト”だからです。
否定していたものを、肯定に。守りを、憧れに。——これが「言葉の翻訳」です。同じ強みでも、翻訳ひとつで、共感の輪がぐっと広がります。
その言葉は、お客さまと同じ方向を向いていますか
「めぐりの家」に、新しい機能は何ひとつ足していません。変えたのは、言葉だけです。それでも、届く相手も、心の動き方も、大きく変わります。
これは、この建築士さんだけの話ではありません。
素晴らしい技術やこだわりを持っているのに、それを「守りの言葉」や専門用語で語ってしまっている。そんな中小企業を、私はたくさん見てきました。
一度、自社の商品やサービスを表す言葉を、そっと眺めてみてください。
その言葉は、お客さまと同じ方向を向いた「共感の言葉」になっているでしょうか。それとも、いつのまにかお客さまと相対する「守りの言葉」になっていないでしょうか。
「らしさ」は、すでに皆さんの中にあります。足りないのは、多くの場合「技術」ではなく、それを届ける「言葉」なのです。
私たちカケハシ・スタイルは、中小企業診断士として経営のお話をじっくりうかがうところから始めます。「らしさ」の言語化・ネーミングから、それを伝えるホームページ制作・ブランディングまで、ワンストップでお手伝いしています。デザインの前に、まず言葉。ここが私たちのこだわりです。
「自社の強みが、どうもうまく伝わっていない気がする」。そう感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。一緒に、あなたの会社の「伝わる言葉」を見つけましょう。