ブランディングは「らしさ」の言語化から。中小企業診断士が大切にしているヒアリングの進め方
こんにちは、カケハシ・スタイル代表で中小企業診断士の田中です。
弊社は、中小企業のブランディングやホームページ制作をお手伝いしている会社です。
制作のご依頼をいただくと、私たちはまず、デザインやサイト構成の話はしません。最初にやることは「経営の話を聞くこと」です。
なぜ、デザインの前に経営の話を聞くのか。今回は、私たちがブランディングやWeb制作で大切にしている「ヒアリング」の進め方についてお伝えします。
なぜ、デザインの前に「経営の話」を聞くのか
ホームページやパンフレットの制作を依頼するとき、多くの方が「どんなデザインにするか」から考え始めます。
でも、私たちはそこからスタートしません。
まず、経営者の方に「なぜこの事業を始めたのか」「どんな想いで続けているのか」「どういうお客さまに、どう喜んでもらいたいのか」をじっくりお聞きします。
なぜか。
ホームページもパンフレットもロゴも、すべて「らしさ」を伝えるための手段だからです。
伝えるべき「らしさ」が明確になっていなければ、どんなに美しいデザインでも、お客さまには響きません。綺麗なだけのホームページなら、今の時代、AIでも作れます。でも、「らしさ」や「想い」まで伝えるには、まず経営の深い部分まで話を聞く必要があるのです。
だから、私たちはデザインの前に「経営の話」を聞きます。
「らしさ」は、創業の原点の中にある
では、「らしさ」はどこにあるのでしょうか。
私は、650社以上の経営支援を通じて確信していることがあります。それは、「らしさ」は必ず創業の原点の中にある、ということです。
先日、活版印刷とデザインを手がけるご夫婦の事業をサポートしました。
代表が活版印刷の職人で、奥さまがデザイナー。奥さまは大学時代から紙のデザインを専攻し、「紙をいかに残すか。そのために、紙にいかに付加価値をつけるか」という想いで活版印刷の世界に飛び込んだそうです。
副業として始めたワークショップから、イベント出店、百貨店での催事企画へと事業が広がっていきました。
お話を聞き進めるうちに気づいたのは、すべてが「紙への想い」という一本の軸でつながっていること。商品も、技術も、イベントの企画も、根底にあるのは「紙が好き」「紙の魅力を届けたい」という純粋な動機でした。
この「原点」が見えたことで、新商品開発の方向性も自然と定まりました。地域資源である和紙と高いデザイン技術力を掛け合わせた文具の開発。それは「紙に付加価値をつけたい」という原点の延長線上にある、まさに「らしい」取り組みです。
経営者の方は、日々の業務に追われていると「なぜやっているのか」を忘れてしまいがちです。手段が目的化してしまう。
でも、創業の経緯を言葉にしていく中で、「ああ、自分はこういう想いでこの仕事を始めたんだった」と、志を再確認できる瞬間があります。
その「原点の再確認」が、ブランディングの出発点になるのです。
「モノ」ではなく「コト」を言語化する
原点が見えたら、次に取り組むのは「提供価値」の言語化です。
私は、提供価値は「モノ」と「コト」の2つの軸で整理すると分かりやすいと考えています。
「モノ」とは、商品やサービスそのものの特徴やウリです。
「コト」とは、お客さまがそれを通じて得るハッピーな体験や感情のことです。
そして、お客さまが本当に求めているのは「コト」の方です。
ある着付け教室の方を支援したときのことです。集客に悩んでおられました。ホームページもインスタグラムもある。でも、新規のお客さまに届かない。
お話を聞き進めていくと、その方が届けたいのは「着付けの技術」そのものではないことが見えてきました。
「着物で体が整う」という考え方。着物を着ることを通じて、心と体を整え、自分らしく豊かに暮らしてほしい。「着物をワンピースと同じような選択肢として選んでもらいたい」——そんな想いが根底にありました。
つまり、届けたいのは「和装のあるライフスタイル」だったのです。
「着付け教室」というモノを売るのではなく、「和装のある豊かな暮らし」というコトを届ける。そう発信を切り替えることで、届く相手が変わります。
「着付けを習いたい」という人は限られます。でも、「自分らしいライフスタイルを手に入れたい」「心と体を整えたい」と考えている人はたくさんいます。ヨガや薬膳と同じ文脈で、和装というライフスタイルを届けていく。そうすることで、着付けサービスへの自然な流れが生まれます。
モノではなくコトを言語化する。これが、ホームページやチラシで「何を発信するか」を考える上での土台になります。
「らしさ」を伝える手段を設計する
「らしさ」が言葉になったら、それをどうお客さまに届けるか。伝える手段の設計が次のステップです。
ホームページ、パンフレット、チラシ、看板、SNS、メニュー表——。お客さまとの接点はたくさんあります。そのすべてが「らしさ」を伝える手段です。
蕎麦を中心とする食堂の支援をしたときの話です。
地元農園から仕入れたそば粉を使った手打そば。天然の魚、有機農法の野菜、古民家を改築した空間、陶芸家にオーダーした器。素材にも空間にも、ひとつひとつにこだわりが詰まったお店でした。
でも、お話を聞いていて感じたのは、「こだわりがとても深いのに、それがお客さまに十分に伝わりきっていない」ということでした。
たとえば天ぷら。地元農園の有機野菜を使っているのに、他の産地のものと組み合わせて提供しているため、その価値がメニューからは見えにくい状態でした。
そこで一緒に考えていったのが「プレミアムメニュー」です。
地元農園の有機野菜のみを使った天ぷら。手打そば、有機野菜の天丼、野菜のつけ合わせをセットにした特別メニュー。地産地消を体現した、お店のこだわりを凝縮した一品です。
プレミアムメニューの目的は、単に高単価の商品を増やすことではありません。プレミアムメニューがあることで、「地元農園の有機野菜を使っていること」「地元のそば粉で手打ちしていること」といった、お店のこだわり——つまり「らしさ」——が自然とお客さまに伝わるようになります。
これはメニューの話ですが、本質はホームページやパンフレットでも同じです。
お客さまは、提供価値が分からないお店には入りづらいですし、価値が伝わっていないものには、それに見合う対価を払えません。
「らしさ」を言語化した上で、それが伝わるようにホームページを設計し、パンフレットを構成し、看板を作る。すべての接点で一貫して「らしさ」を伝えること。それがブランディングです。
制作事例:「らしさ」の言語化からはじめたブランディング
弊社が手がけたブランディング事例をご紹介します。いずれも、ヒアリングによる「らしさ」の言語化からスタートし、それをホームページやパンフレットに落とし込んだ事例です。
まとめ
- ブランディングの出発点は、デザインではなく「らしさ」の言語化
- 「らしさ」は、創業の原点の中にある。なぜ事業を始めたのか、を言葉にすることがブランディングの第一歩
- 提供価値は「モノ」と「コト」で整理する。お客さまが求めているのは「コト」の方
- ホームページ、パンフレット、メニュー、看板——すべてが「らしさ」を伝える手段。一貫して「らしさ」を伝えることがブランディング
- 「らしさ」が言語化されると、ホームページで何を発信すべきかが明確になり、お客さまの心に響くものに変わる
「らしさ」の言語化からしっかり取り組みたい、そんな時は、ぜひお気軽にご相談ください。