経営理念はなぜ重要なのか? 中小企業の経営理念と経営理念を作るポイント

株式会社カケハシ・スタイル代表で中小企業診断士の田中大介です。
日々、経営コンサルティングやブランディングサポートをしていますが、経営理念の重要性が増していると感じています。
今の時代にお客さまに選んでもらい、選ばれ続けるためには、商品・サービスが差別化されていることはもちろん、その背景にある想いに共感されることも必要です。
私は、「差別化」と「共感」を生み出す源になるものが「経営理念」であると考えています。
「経営理念」の元に会社やお店の行動すべてを一貫させる。
それが結果として、商品・サービスの差別化と顧客からの共感につながる。
私は、これまでの経営コンサルティングの経験から、そう実感しています。
経営において極めて大事な経営理念。
なのに、分かっているようで、捉えどころが難しいのが経営理念。
ということで、経営理念について、あらためて掘り下げて考え、しっかりと定義していきたいと思います。
理念とはなにか?
「理念」とは? まず、そもそも「理念」という言葉について考えてみましょう。
goo辞書で調べてみます。
理念:ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え。
「理」と「念」もそれぞれ調べてみましょう。
理(ことわり):物事の筋道。条理。道理。
念:(1)気をつけること。注意すること。心配り。(2)常に心の中を往来しているおもい。気持ち。
なるほど、「理念」とは、「常に心を配る道理」と考えられるでしょうか。
では、経営において、「常に心を配る道理」とは何でしょう?
「もっともっとおカネ儲けるぞー」ということでは、きっとないはずですよね。
経営における道理とは?
経営における道理を考える上で、頭に浮かんだのがビジネス本の古典であり名著『ビジョナリー・カンパニー』です。
『ビジョナリー・カンパニー』の中で説かれている「基本理念」は、経営における道理と解釈していいと思います。
基本理念とは、単なるカネ儲けを超えた基本的価値観と目的意識である。
『ビジョナリー・カンパニー』より
「基本理念 = 基本的価値観 + 目的」であり、
基本的価値観:組織にとって不可欠で不変の主義
目的: 単なるカネ儲けを超えた会社の根本的な存在理由
です。
経営における道理とは、単なるカネ儲けを超えた基本的価値観と目的意識なわけですね。
経営理念とは?
経営理念とは、会社やお店という集団として、そしてその集団の中の個人として行動していく上で、常に頭に置くべき道理であり、それはおカネ儲けを超えた、社会に対してどう貢献していくか、どんな価値を提供していくか、という想いであると言えます。
「企業は社会の公器である」という松下幸之助の言葉も頭に浮かびます。
ここまでを踏まえ、私なりに経営理念を端的に言語化したいと思います。
経営理念:社会の中で、どうあるべきか?その「あるべき姿」へと向かう想い

経営理念の参考として、ソニーの創業者のひとり、井深大がソニー創業時に作った設立趣意書の冒頭の文を載せましょう。
真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設
SONY公式サイトの企業情報の中の「設立趣意書」より
これぞ経営理念。
経営に迷った時に羅針盤となりますし、顧客として応援したくなりますし、従業員であれば「よし、やるぞ」という気迫がこれを読むたびにみなぎるはずです。
経営理念を作ってみる
経営理念が明文化されていないのであれば、是非、この機会に作ってみましょう。
その際、「社会の中で、どうあるべきか?」という問いを細分化して考えることが大切です。
まず社会の構成員として「顧客」が考えられます。「従業員」も組織の一員であると同時に社会の一員です。「モノやサービス」も社会の一部ですよね。
とすると、社会の中でどうあるべきか?を考えることは、
- 【顧客】に対してどんな価値を提供するか?どう喜んでもらいたいか?
- 【従業員】にどんな働き方をしてもらいたいか?会社にどんな誇りを持ってほしいか?
- 【モノやサービス】にどんなこだわりがあるか?それはどんな社会的意義を持つか?
という問いに答えることになります。さらに、そういったあるべき行動の先に、
- どんな社会を描くのか?希望するのか?
というビジョンがあります。
こうした問いに答えていくことで、「経営理念」が見えてくるはずです。
地域の事業者の「経営理念」
経営理念は大企業だけに必要なのではありません。
地域でがんばる小さな事業者でも、素晴らしい理念を持ち、共感される営業をしているところは多くあります。
以下は、私がヒアリングした経営者の理念の一例です。
- ユニークな発想で人々に「快晴な毎日」を提供する。(ダンススタジオ)
- 着物を着る美しさを足元から支え続ける。(履物製造)
- ひとの心と町を豊かにする。(パン屋)
- 一生懸命働くお客様の『よし!また明日から頑張ろう!!』のお手伝い。(理容室)
いずれも、言葉としてはシンプルですが、社会の中で自分たちはどうあるべきか?という熱意と深い想いがあります。
理念は常に経営者や従業員とともにある「日々の行動を貫く原動力」であるべきなのです。
経営理念を一貫させることで、事業が尖る
コンサルティングやブランディングのサポートをする際、私は必ず経営理念を聞きます。
経営者に聞いてみると、経営理念があったとしても、すぐに言葉として出てこないことも多いです。
私は、すべての行動に一貫させるものが「経営理念」であり、経営者や従業員の念頭に常にあるものであるべきと考えています。
私は、鳥貴族の理念「焼鳥屋で世の中を明るくしたい」がとても好きです。
これ以上ないほどシンプルなメッセージ。
でも、「自分たちの存在意義は、焼鳥を提供するのでは、世の中を明るくすることなんだ」という強いメッセージを感じます。
世の中を明るくする焼鳥屋とは、どんなお店だろう?
そのお店は、どんなメニューだろうか、どんな外観・内観だろうか、どんな人が働いていて、どんな接客だろうか。
そんな風に、理念からすべてを考えていくことで、「焼鳥屋」から離れ、「世の中を明るくする焼鳥屋」として、オンリーワンなお店になっていくのだと思います。
経営理念によって、商品・サービスは差別化していきますし、行動が一貫することで、姿勢が伝わり共感も生まれます。
おわりに
先行きの不透明な時代に、事業の行き先を照らす羅針盤となり、推進力にもなるものが経営理念です。
「経営理念」が軸となり、会社やお店の行動すべてが一貫していることが、私が考える経営のあるべき姿です。
ぜひ、今一度、経営理念を見直してみてください。もし、言葉にするのが難しいと感じたら、お気軽にご相談ください。
理念づくりの壁打ちや、言語化のサポートも行っています。